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ビジネス | トランザクティブ・メモリー:組織の記憶力を紡げ!

POST:2020.02.05

ようやく冬本番。
新型コロナウイルスやインフルエンザの流行に戦々恐々とする日々ですが皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

人間というのは不思議な生き物で、「個人」レベルだと最適な選択をして動くことができるのに「集団」となると何だかパッとしない結果になってしまうこともしばしば。

今回の新型コロナウイルスについても、集団ヒステリーにならないように気を付けて対応して欲しいものだと切に願うばかりです。

さて、今回のテーマは「トランザクティブ・メモリー」です。
冒頭にも示したように、人間とは「集団」つまり「組織」で行動することの方が多い生き物ですがそこには個人レベルでの活動と違うコツのようなものが存在しています。

以前「コミュニケーションと集合知」というタイトルの記事を書きました。
https://createmyself.site/322/

「トランザクティブ・メモリー」はこの『集合知』についての研究分野です。
一般的に「組織学習」という分野のお話になりますが、これが我々の集団生活(主に仕事)に大いに役立つ考え方です。
具体的にはどんなものか、ご紹介していきます。

人間は学習する。組織も学習する

人間は学習していく生き物です。
学校教育で学ぶ基礎的な知識は、高度な研究分野やビジネスなどの社会生活で身に着ける新しい知識を吸収するための準備みたいなものです。
こうして生きている限り延々と学習していき、できなかったことができるようになったり知らなかったことを知っていくことで「成長」していきます。

では、人間の集合体である「組織」も学習していくのでしょうか?
現代の経営学ではこの質問に対する回答は「イエス!」です。

人間と同じように組織も学習します。

これは学習効果曲線(ラーニングカーブ)というものが示しています。
つまるところ、同じ仕事でも経験を積めばだんだんスピードが上がっていきます。
これは個人においても組織においても見られる現象です。

組織的な学習・経験を積んでいくことでより効率的な組織となり、また高度な仕事に取り組む土台にもなっていきます。
個々人のパフォーマンスを上げることも重要ですが、組織としてのパフォーマンスを上げていくことも重要。
その前提として、組織にも学習能力があるということをまず知っておきましょう。

こういった学習効果をより高めるために有効なのが「トランザクティブ・メモリー」ということになります。

トランザクティブ・メモリーとは

では果たして「トランザクティブ・メモリー」とは何でしょうか。

概要からお話すると、1980年代半ば、アメリカの社会心理学者ダニエル・ウェグナー氏が提唱した概念です。
組織学習という分野の嚆矢となるような研究の一つですね。

先ほど、組織は学習するか?という問いに対して「イエス」と返答しました。
しかし、組織ごとに学習効果はバラつきがあります。

学習効果の高い組織とそうではない組織にどのような違いがあるのか。
これを明らかにするキーワードとなるのが「トランザクティブ・メモリー」と言えるでしょう。

具体的にはどういうものか。

学習と聞くと何だか学校の教室の授業のようなものを思い浮かべてしまうかも知れません。
画一的なプログラムをある程度の水準まで理解してもらうのが学校の「学習」かもしれませんが、実社会ではそう簡単に画一的な学習をすることは難しいものです。

トランザクティブ・メモリーは、組織的な学習を促すものではありません。
全員が同じようなプログラムを学んだとて、全員が同じ水準で成長することがあり得ないという理解に基づいて発揮されるものです。
組織全体が同じことを記憶していくのではなく、組織内の「誰が」「何を知っているか」を把握することが重要であるというのがトランザクティブ・メモリーです。

つまり、個々人が「何を知っているか(What)」はどうでもよく「このことについて知っているのは誰誰さん(Who knows what)」ということを組織が理解している方が効果的であるという考え方です。

このトランザクティブ・メモリーが機能している組織は、全員が画一的に学習している組織よりも学習効果が高いと考えられています。

情報共有とトランザクティブ・メモリー

組織学習を促すのがトランザクティブ・メモリーです。
トランザクティブ・メモリーを促進するためにも情報公開は非常に重要な役割を果たします。

トランザクティブ・メモリーに必要なのは、全員が知るべき画一的な情報ではありません。

よくイントラネットや社内メール、社内報などで情報共有を図ろうとしている組織が見受けられます。
この情報共有は「全員が知るべき情報」という枠組みで共有されています。
つまり、知っていなければいけない情報。
情報共有が無意味だという訳ではありませんが、この高度情報化社会において大量の情報を全員に共有させる意味は何でしょうか?という話です。

トランザクティブ・メモリーに必要なのは、「知っていること」ではありません。
知っている人が誰なのかを「把握すること」です。

「このケースなら〇〇さんが詳しい」とか「△△については◇◇さん」という情報を組織のメンバーがそれくらい把握しているかが組織学習を促します。
そのためにも、「誰が」「何を知っているのか」という情報が常に共有されるような情報公開をしていかなければいけません。

全員が知っておかなければなら情報とトランザクティブ・メモリーを活かすための情報共有はうまく分けて使っていく方がいいかと思います。

トランザクティブ・メモリーと「組織論」

一般的にトランザクティブ・メモリーは大きな組織の方が機能しやすいと考えられています。
業務の専門性も高まりますし、何よりスペシャリストが増えるからです。

もちろん、小さな規模の組織でもトランザクティブ・メモリーは重要な役割を果たします。
しかし、規模が小さい場合一人ひとりの業務が散らばっていたり、業務の領域が大きく被っていたりすることも多いので大きな組織に比べるとトランザクティブ・メモリーが機能しにくい環境にあるかもしれません。

このトランザクティブ・メモリーを組織学習と有効的に紐づけるためにも「組織論」の基本である「個性を活かす」という観点が重要になってきます。

個性を活かすというのは、ある意味は個人の長所を伸ばしていくこと。
専門性を高め、「△△については自分が得意」という領域を作っていくことです。

日本人は、スペシャリスト集団よりもジェネラリスト集団を好む傾向が強いように思います。
みんながある程度同じスキルや知識を持っていることを好む傾向が強い。

しかし、組織とは本来ジグソーパズルのようなものです。
一人ひとりピースの形が違いますし、常に変化します。
そういったピースを上手く組み合わせていくのがマネジメントの魅力の一つ。

みんなが同じ形のピースではない以上、その人の「強み」に焦点を当てて組織をデザインしていくことが求められているわけです。
長所を伸ばして専門性を高めることで、「〇〇の分野ならこの人!」という〇〇の部分が増えていきます。
その蓄積こそがトランザクティブ・メモリーであり、組織が学習しながら強くなっていくということです。

繰り返しになりますが、組織においては「みんなが同じ」である必要性などはありません。

まとめ

という訳で、「トランザクティブ・メモリー」というのが何なのか何となくご理解していただいたかと思います。

ざっくりとまとめてみましょう。

1.「組織」は個人と同様学習する
2.組織学習においては「トランザクティブ・メモリー」が重要な役割を果たす
3.トランザクティブ・メモリーとは「知っていること」ではなく「誰が知っているのか把握すること」
4.トランザクティブ・メモリーを促進するのは情報公開
5.個人個人の長所に焦点を当てて、専門性を高めてあげる方が効果的

こんな感じでしょうか。
もちろん、トランザクティブ・メモリーが機能するにも組織の規模や情報公開の水準など条件とでも言えるものが存在しています。

それに、全員が同じことを知っていなければならない訳じゃないからといって「知っておかなければならないことを放棄していい」という訳ではありません。

また、トランザクティブ・メモリーは通常無意識的に機能しているケースが多いです。
こういった潜在的な機能をいかに顕在化させるかというのも割と重要な視点かと思います。

当然一朝一夕でトランザクティブ・メモリーが機能することはありませんし、いきなり飛躍的に組織学習の効果が高まる訳でもありません。
ひとえに、いかに個人のパフォーマンスを高めるかという視点と発想からどれだけ組織を見直していけるかが重要なポイントです。

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