ビジネス | シリーズ:競争戦略PART3.5~コア・コンピタンスを活かした戦略~
POST:2018.11.12
コアコンピタンスとは何か、については前回紹介しました。
自社が持つ「圧倒的な強み」こそがコア・コンピタンスと呼ばれるもの。
ポーターの戦略論が「市場」から考えるのに対して、「コアコンピタンス経営」ではまず自社の強みを捉えること、そしてその強みを活かした戦略を立案することを推奨します。
後の戦略論においてもたいていはこの2パターンが主流となります。
特に、コア・コンピタンスの考え方はJ・Bバーニー教授の登場によって、一気に洗練されたというイメージがありますが、それについてはまたいずれ。
さて、コア・コンピタンスを活かそう!と言ってもそう容易ではありません。
自社の強みは何か、というのが理解できたとしても、それをどう活かすかは別問題だからです。
「コアコンピタンス経営」によると、戦略の方向性は大きく分けて2つとなります。
ひとつが、ストレッチ戦略でもうひとつがレバレッジ戦略です。
ストレッチ戦略とは
「コアコンピタンス経営」で書かれているストレッチとは、「背伸び」のことを指します。
たいていの戦略立案は過去のデータの蓄積、あるいは現在の状況を出発点に立案されます。
そこに対して、「背伸び」する感覚を持つべきであるという訳です。
背伸びするとは、「未来志向」になると言い換えていいでしょう。
「今」ではなく10年後の顧客を獲得するために動くこと。
ストレッチ戦略が求めるのはこの思考回路となります。
コア・コンピタンスはそれ単体では機能のさせようがありません。
未来に向けて動くこと、そしてそれを全社的な目標に落とし込みすべての社員が目的地を共有することで成果を発揮します。
野放図に経営資源を拡大・拡散させるのではなく、「未来」を見据えた戦略立案をすることでコア・コンピタンスが機能してくるのです。
レバレッジ戦略とは
レバレッジとは「てこ」のことです。
一般的には投資の分野などでなじみがある単語でしょうか?
「コアコンピタンス経営」で描かれている「レバレッジ戦略」は、経営資源の最大活用のことです。
未来へ向かう戦略を実行するに際して、不足している経営資源がある場合、まずはそこから「てこ入れ」します。
経営資源のレバレッジ達成には次の5つの手法によって達成されると述べられています。
1 カギとなる戦略上の目標に経営資源を効率的に集中させる
2 より効率よく経営資源を集積させる
3 高い価値の創造を目指して、ある経営資源を別の経営資源で補完する
4 可能な限り経営資源を保守する
5 経営資源をできるだけ短時間に回収する
レバレッジ戦略は、ストレッチ戦略と対立する考え方というよりも、この2つを組み合わせることで効果を発揮するものだと考えられています。
まとめ
「コアコンピタンス経営」は、戦略書というよりも、コアコンピタンスという概念を明らかにし、「市場主義」で近視眼的に戦略を立案することの危険性を警鐘した書籍だと理解しています。
そのため、ややもすればポーターの戦略論に比べると「マネジメント」について描かれた本であるという印象が強い気もします。
しかし、この内部資源を有効に活用し未来を見据えて戦略を立てるというのは基本的な考え方にして忘れられがちな価値観でもあります。
例えば、スポーツチームで考えてみましょう。
相手のチームに合わせて戦い方を変えられるチームというのもあるでしょう。
しかし、自分たちの「強み」を前面に押し出して戦うチームもあります。
そのどちらも間違いではないと思いますが、相手のチームの分析も自分たちの強みを活かすことも両立させてこそ強いチームとなるのではないでしょうか?
相手(市場)のことばかりではなく、自分たちの「強み」という武器も忘れるべからず。
「コアコンピタンス経営」が求めている経営価値観は、まさにこの部分ではないかと個人的に考えています。